異形と賭博師のネタ
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大切な思い出
グール=ヴールが愛銃を直してもらう話。オリキャラ店主との会話メイン。CP要素はない。
長らく使っていた銃が前の戦闘で壊れ、補給のために立ち寄った町で銃を修理することにした。
異形の姿を町の人に晒すのは気が引けた。だが彼が言った通り、住民たちは私の姿を特に気にしていないようだ。
私は若い店主に声を掛けた。
「この銃を直してもらえないだろうか」
「構わねえが随分年季の入った銃だな。何年ぐらい使ってるんだ?」
「おそらく10年くらいだ」
「そんなにか、新しい銃を買おうとは思わないのか?」
店主の言うことは最もだろう。私に銃を渡した彼も新しい銃を買うことを勧めた。それでも。
「この銃は友からの贈り物だ。私にとっての銃はこれだけだ」
「...そういうことなら仕方ねえな、気合い入れて直してやるからちょっと待ってろ」
店主は笑いながら修理道具を取り出した。
カチャカチャと銃を修理する音を背景に店主は私に声をかけた。
「なあ、あんたに銃を渡した奴はどんな奴なんだ?」
何から話せば良いだろうか。彼の信念や勝負強さだろうか。私の存在を認め、共に歩んでくれることだろうか。だが、一言で言うならば。
「…何も持たなかった私に『大切な思い出』を与えてくれた人だ。彼がいなければ今の私は存在しなかっただろう」
初めて彼が私のことを「旦那」と呼んだ日のこと。銃の使い方を教わった日のこと。愚かさも醜さもひっくるめて自分のことが好きだと言ってくれた日のこと。何気ない一日とて忘れたことはない。
「…そいつのこと、本当に大切なんだな」
「ああ、かけがえのない存在だ」
「…そうか」
店主は修理の終わった銃を渡してきた。
「修理、終わったぜ。銃もダチも、大事にしろよな」
「もちろん、そのつもりだ」
カランコロンとドアベルが鳴った。私は咄嗟に目立たない位置に移動しようとしたが、視線の先に見慣れた姿があった。
「いらっしゃい、そっちの兄ちゃんも銃の修理かい?」
「いいや、連れを迎えにきた」
そう言って彼は私に満面の笑みを向けた。
「グール=ヴールの旦那、今日も勝ったぞ!」
「流石の強運だな、レノ」
「ありがとよ、旦那。で、銃の修理は終わったのか?」
「つい先程終わったばかりだ」
「そいつは丁度いい、今から宿で飲もうぜ。いい酒が手に入ったんだ」
「わかった。支払いをするから少し待っていてくれ」
店主からはそれなりの額を要求された。
「悪いな、貴重な部品を使ったからちょいと高めだ」
だが、友が預けてくれた銃が二度と使えなくなることに比べれば安いものだ。
「構わない。むしろ私の無茶な注文に応えてくれた事に、感謝する」
「面白い仕事だったぜ。よかったらまた来てくれよな!」
「またこの町に立ち寄ることがあるならば、是非頼みたい」
今度は、彼と共に銃を見てもらうのも悪くないだろう。
「待たせてすまない、レノ」
「気にすんな、賭けに勝ったときに旦那と飲む酒が一番美味いからな!」
「私も君と飲む酒が一番好きだ」
「…そうかい」
今日もまた『大切な思い出』が増えていく。それを彩る存在はいつだって君なのだ、レノ。
畳む
グール=ヴールが愛銃を直してもらう話。オリキャラ店主との会話メイン。CP要素はない。
長らく使っていた銃が前の戦闘で壊れ、補給のために立ち寄った町で銃を修理することにした。
異形の姿を町の人に晒すのは気が引けた。だが彼が言った通り、住民たちは私の姿を特に気にしていないようだ。
私は若い店主に声を掛けた。
「この銃を直してもらえないだろうか」
「構わねえが随分年季の入った銃だな。何年ぐらい使ってるんだ?」
「おそらく10年くらいだ」
「そんなにか、新しい銃を買おうとは思わないのか?」
店主の言うことは最もだろう。私に銃を渡した彼も新しい銃を買うことを勧めた。それでも。
「この銃は友からの贈り物だ。私にとっての銃はこれだけだ」
「...そういうことなら仕方ねえな、気合い入れて直してやるからちょっと待ってろ」
店主は笑いながら修理道具を取り出した。
カチャカチャと銃を修理する音を背景に店主は私に声をかけた。
「なあ、あんたに銃を渡した奴はどんな奴なんだ?」
何から話せば良いだろうか。彼の信念や勝負強さだろうか。私の存在を認め、共に歩んでくれることだろうか。だが、一言で言うならば。
「…何も持たなかった私に『大切な思い出』を与えてくれた人だ。彼がいなければ今の私は存在しなかっただろう」
初めて彼が私のことを「旦那」と呼んだ日のこと。銃の使い方を教わった日のこと。愚かさも醜さもひっくるめて自分のことが好きだと言ってくれた日のこと。何気ない一日とて忘れたことはない。
「…そいつのこと、本当に大切なんだな」
「ああ、かけがえのない存在だ」
「…そうか」
店主は修理の終わった銃を渡してきた。
「修理、終わったぜ。銃もダチも、大事にしろよな」
「もちろん、そのつもりだ」
カランコロンとドアベルが鳴った。私は咄嗟に目立たない位置に移動しようとしたが、視線の先に見慣れた姿があった。
「いらっしゃい、そっちの兄ちゃんも銃の修理かい?」
「いいや、連れを迎えにきた」
そう言って彼は私に満面の笑みを向けた。
「グール=ヴールの旦那、今日も勝ったぞ!」
「流石の強運だな、レノ」
「ありがとよ、旦那。で、銃の修理は終わったのか?」
「つい先程終わったばかりだ」
「そいつは丁度いい、今から宿で飲もうぜ。いい酒が手に入ったんだ」
「わかった。支払いをするから少し待っていてくれ」
店主からはそれなりの額を要求された。
「悪いな、貴重な部品を使ったからちょいと高めだ」
だが、友が預けてくれた銃が二度と使えなくなることに比べれば安いものだ。
「構わない。むしろ私の無茶な注文に応えてくれた事に、感謝する」
「面白い仕事だったぜ。よかったらまた来てくれよな!」
「またこの町に立ち寄ることがあるならば、是非頼みたい」
今度は、彼と共に銃を見てもらうのも悪くないだろう。
「待たせてすまない、レノ」
「気にすんな、賭けに勝ったときに旦那と飲む酒が一番美味いからな!」
「私も君と飲む酒が一番好きだ」
「…そうかい」
今日もまた『大切な思い出』が増えていく。それを彩る存在はいつだって君なのだ、レノ。
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ホットケーキを食べよう
ホットケーキの日にちなんで2人がホットケーキを食べるだけの話。腐要素なし。
「これは…?」
今、私の目の前には見慣れない円形の物体がある。皿に乗っている上にそばにナイフとフォークがあるからこれは食べ物だろうか。
「旦那、ホットケーキ食べたことがないのか?」
「ホットケーキと言うのか…初めて見たな」
レノは本当に私の知らない世界を次々に私に教えてくれる。
「マジか…。まあこんな生活じゃあ食べる機会もないか。甘くて美味いぜ」
そう言ってレノはナイフで生地を切り分け、口に運ぶ。私はレノに倣いナイフで切り分けたホットケーキを口に入れた。
「…初めて食べたがふわふわとした食感と優しい甘さが癖になるな。バターのしょっぱさと蜂蜜の甘さもよく合っている。こんなに美味しいものがあったとはな」
「クリームやフルーツを乗せたものもあるぜ。コーヒーと合わせて食べるのもいい」
「それは気になるな」
「今度一緒に食べに行くか?」
「しかしこの異形を晒すのは…」
「これまでに何度も賭場や酒場に一緒に行っただろう?今更どうということはないと思うがな」
「…そうだといいが」
「さあ、冷めないうちに食おうぜ」
甘さとしょっぱさが混ざったホットケーキ。少しレノに似ているのかもしれないなんて思ってしまった。
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ホットケーキの日にちなんで2人がホットケーキを食べるだけの話。腐要素なし。
「これは…?」
今、私の目の前には見慣れない円形の物体がある。皿に乗っている上にそばにナイフとフォークがあるからこれは食べ物だろうか。
「旦那、ホットケーキ食べたことがないのか?」
「ホットケーキと言うのか…初めて見たな」
レノは本当に私の知らない世界を次々に私に教えてくれる。
「マジか…。まあこんな生活じゃあ食べる機会もないか。甘くて美味いぜ」
そう言ってレノはナイフで生地を切り分け、口に運ぶ。私はレノに倣いナイフで切り分けたホットケーキを口に入れた。
「…初めて食べたがふわふわとした食感と優しい甘さが癖になるな。バターのしょっぱさと蜂蜜の甘さもよく合っている。こんなに美味しいものがあったとはな」
「クリームやフルーツを乗せたものもあるぜ。コーヒーと合わせて食べるのもいい」
「それは気になるな」
「今度一緒に食べに行くか?」
「しかしこの異形を晒すのは…」
「これまでに何度も賭場や酒場に一緒に行っただろう?今更どうということはないと思うがな」
「…そうだといいが」
「さあ、冷めないうちに食おうぜ」
甘さとしょっぱさが混ざったホットケーキ。少しレノに似ているのかもしれないなんて思ってしまった。
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2部くらいのグル→レノの話。明確にCP要素あります。いつかレノ視点を書きたいと思ってから数年経ってる。
補給のために立ち寄った島で、私達はいつものように宿の部屋で酒を飲みながらカードに興じている。島に到着したころから風が強くなりだした。レノが聞いた話によると今夜には嵐が来るという。
酒瓶が半分空いたころだろうか。レノがおもむろに口を開いた。
「旦那はやっぱり凄いな。どんな時でも紳士だ」
「そんなことはない。私は醜い存在だ」
「少なくともオレはアンタのことをいい男だと思ってるぜ?」
またこの笑みだ。それなりの時間を共に過ごして気が付いたが、レノは時々戦闘やギャンブルに臨むときや仲間たちと接するときとは少し違う表情を見せることがある。初めて私のことを「旦那」と呼んだあの日に見せた笑み、銃を教わった時に微かに触れた指の温度、船室で共に飲む時の穏やかな目。この声が、ぬくもりが、表情が、私を虜にするのだ。できるなら、私以外にこの表情を見せて欲しくないなどと邪な思いを抱いてしまうほどには。
「今度また新しい遊びを教えてやるよ。旦那ならすぐに覚えられるはずだ」
「それはありがたいが、私などにこんなに時間を割いていいのか」
「オレは旦那だからそう言ってるんだぜ?」
レノはこんな異形の私にも優しい。彼にとってはきっと何も知らない子供にものを教える感覚なのだろう。だが、私にとっては。
「なあ旦那、もっとこっちに来いよ」
今日のレノは少し様子が変だ。ふと酒瓶を見ると先程より酒の残量が明らかに減っている。普段より明らかにハイペースだ。火照った顔にとろんとした紫の瞳が嫌でも目に入る。これ以上は色々な意味でまずい。
「レノ、飲みすぎだ。そろそろ止めたほうが…」
一際雨音が強くなった。窓枠も先程からガタガタと音を立てている。今にも壊れてしまいそうだ。
「なあ旦那、オレは…」
一瞬窓から光が見え、ドカンと音がした。すぐ近くに雷が落ちたのだろう。
「すまないレノ、何か言ったのか?」
「…いや、大したことじゃない」
「…そうか」
彼は何を言おうとしていたのだろうか。私に聞かれたくないようなことだったのだろうか。
世界から祝福されるような「なにか」を持っている君とは違い、私は世界に疎まれる、おぞましい存在だ。こんな醜い異形が君に他の仲間とは違う特別な想いを抱いている、なんて君が知ったらどう思うのだろうか。きっと気味悪がられ、今まで通りに接してくれないだろう。だが、もうこの想いを断ち切ることなど不可能な領域になっているのかもしれない。君が駄目だと言おうと一生好きでいたい、なんて思ってしまったのだから。畳む