グルレノ 2025/02/01 Sat 大切な思い出グール=ヴールが愛銃を直してもらう話。オリキャラ店主との会話メイン。CP要素はない。続きを読む長らく使っていた銃が前の戦闘で壊れ、補給のために立ち寄った町で銃を修理することにした。異形の姿を町の人に晒すのは気が引けた。だが彼が言った通り、住民たちは私の姿を特に気にしていないようだ。私は若い店主に声を掛けた。「この銃を直してもらえないだろうか」「構わねえが随分年季の入った銃だな。何年ぐらい使ってるんだ?」「おそらく10年くらいだ」「そんなにか、新しい銃を買おうとは思わないのか?」店主の言うことは最もだろう。私に銃を渡した彼も新しい銃を買うことを勧めた。それでも。「この銃は友からの贈り物だ。私にとっての銃はこれだけだ」「...そういうことなら仕方ねえな、気合い入れて直してやるからちょっと待ってろ」店主は笑いながら修理道具を取り出した。カチャカチャと銃を修理する音を背景に店主は私に声をかけた。「なあ、あんたに銃を渡した奴はどんな奴なんだ?」何から話せば良いだろうか。彼の信念や勝負強さだろうか。私の存在を認め、共に歩んでくれることだろうか。だが、一言で言うならば。「…何も持たなかった私に『大切な思い出』を与えてくれた人だ。彼がいなければ今の私は存在しなかっただろう」初めて彼が私のことを「旦那」と呼んだ日のこと。銃の使い方を教わった日のこと。愚かさも醜さもひっくるめて自分のことが好きだと言ってくれた日のこと。何気ない一日とて忘れたことはない。「…そいつのこと、本当に大切なんだな」「ああ、かけがえのない存在だ」「…そうか」店主は修理の終わった銃を渡してきた。「修理、終わったぜ。銃もダチも、大事にしろよな」「もちろん、そのつもりだ」カランコロンとドアベルが鳴った。私は咄嗟に目立たない位置に移動しようとしたが、視線の先に見慣れた姿があった。「いらっしゃい、そっちの兄ちゃんも銃の修理かい?」「いいや、連れを迎えにきた」そう言って彼は私に満面の笑みを向けた。「グール=ヴールの旦那、今日も勝ったぞ!」「流石の強運だな、レノ」「ありがとよ、旦那。で、銃の修理は終わったのか?」「つい先程終わったばかりだ」「そいつは丁度いい、今から宿で飲もうぜ。いい酒が手に入ったんだ」「わかった。支払いをするから少し待っていてくれ」店主からはそれなりの額を要求された。「悪いな、貴重な部品を使ったからちょいと高めだ」だが、友が預けてくれた銃が二度と使えなくなることに比べれば安いものだ。「構わない。むしろ私の無茶な注文に応えてくれた事に、感謝する」「面白い仕事だったぜ。よかったらまた来てくれよな!」「またこの町に立ち寄ることがあるならば、是非頼みたい」今度は、彼と共に銃を見てもらうのも悪くないだろう。「待たせてすまない、レノ」「気にすんな、賭けに勝ったときに旦那と飲む酒が一番美味いからな!」「私も君と飲む酒が一番好きだ」「…そうかい」今日もまた『大切な思い出』が増えていく。それを彩る存在はいつだって君なのだ、レノ。畳む
グール=ヴールが愛銃を直してもらう話。オリキャラ店主との会話メイン。CP要素はない。
長らく使っていた銃が前の戦闘で壊れ、補給のために立ち寄った町で銃を修理することにした。
異形の姿を町の人に晒すのは気が引けた。だが彼が言った通り、住民たちは私の姿を特に気にしていないようだ。
私は若い店主に声を掛けた。
「この銃を直してもらえないだろうか」
「構わねえが随分年季の入った銃だな。何年ぐらい使ってるんだ?」
「おそらく10年くらいだ」
「そんなにか、新しい銃を買おうとは思わないのか?」
店主の言うことは最もだろう。私に銃を渡した彼も新しい銃を買うことを勧めた。それでも。
「この銃は友からの贈り物だ。私にとっての銃はこれだけだ」
「...そういうことなら仕方ねえな、気合い入れて直してやるからちょっと待ってろ」
店主は笑いながら修理道具を取り出した。
カチャカチャと銃を修理する音を背景に店主は私に声をかけた。
「なあ、あんたに銃を渡した奴はどんな奴なんだ?」
何から話せば良いだろうか。彼の信念や勝負強さだろうか。私の存在を認め、共に歩んでくれることだろうか。だが、一言で言うならば。
「…何も持たなかった私に『大切な思い出』を与えてくれた人だ。彼がいなければ今の私は存在しなかっただろう」
初めて彼が私のことを「旦那」と呼んだ日のこと。銃の使い方を教わった日のこと。愚かさも醜さもひっくるめて自分のことが好きだと言ってくれた日のこと。何気ない一日とて忘れたことはない。
「…そいつのこと、本当に大切なんだな」
「ああ、かけがえのない存在だ」
「…そうか」
店主は修理の終わった銃を渡してきた。
「修理、終わったぜ。銃もダチも、大事にしろよな」
「もちろん、そのつもりだ」
カランコロンとドアベルが鳴った。私は咄嗟に目立たない位置に移動しようとしたが、視線の先に見慣れた姿があった。
「いらっしゃい、そっちの兄ちゃんも銃の修理かい?」
「いいや、連れを迎えにきた」
そう言って彼は私に満面の笑みを向けた。
「グール=ヴールの旦那、今日も勝ったぞ!」
「流石の強運だな、レノ」
「ありがとよ、旦那。で、銃の修理は終わったのか?」
「つい先程終わったばかりだ」
「そいつは丁度いい、今から宿で飲もうぜ。いい酒が手に入ったんだ」
「わかった。支払いをするから少し待っていてくれ」
店主からはそれなりの額を要求された。
「悪いな、貴重な部品を使ったからちょいと高めだ」
だが、友が預けてくれた銃が二度と使えなくなることに比べれば安いものだ。
「構わない。むしろ私の無茶な注文に応えてくれた事に、感謝する」
「面白い仕事だったぜ。よかったらまた来てくれよな!」
「またこの町に立ち寄ることがあるならば、是非頼みたい」
今度は、彼と共に銃を見てもらうのも悪くないだろう。
「待たせてすまない、レノ」
「気にすんな、賭けに勝ったときに旦那と飲む酒が一番美味いからな!」
「私も君と飲む酒が一番好きだ」
「…そうかい」
今日もまた『大切な思い出』が増えていく。それを彩る存在はいつだって君なのだ、レノ。
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